Quaとろ (2023)
- bunkeiedison
- 2023年12月27日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年12月28日

◆どうか「くあとろ」と発音してください。
年に1回、4曲入りのデモ音源をCDに残すことをライフワークに決めてから、これが5作目になる。年内かなりギリギリの完成になったけど、思えば一昨年もこのくらいの時期やった気がするよ。物ごとに取りかかるまでに時間がかかるという性格もあるけど、2023年も2023年とて自分なりにアタフタしとったんや、しょうがない部分も大いにある。雪の積もった冬の日本海の旅もしたし、ギターも作ったし、仕事も辞めたし、車も買ったし、アメリカにも行ったし、そんでもって新しい仕事にも就いたし。
そう、とある採用面接のラストチャンスに落ちたことを去年の音源のライナーノーツで書いてたおれやったけど、この10月からは何の因果か、ある関西の山のてっぺんで働いとる。片道何十キロも車で通勤することも、都会の明かりが見渡す限り広がる夜景を職場の窓から見ることも、これまでの自分にはなかった日常や。せっかく決まったペースで決まった量の曲を残すなら、その年その年の自分の暮らしを反映したような音楽にしたい、というのは5年近く前にこの試みを始めた当初からの思いでもあるので、今年の録音はすっかり寒くなった11月から12月にかけて新生活にワタつきながら、眠さをこらえた平日の夜や家事を犠牲にした週末にもっぱら取り組むこととなった。録音にはわりとそういう粗さが出ているところもあるかもしれない。けど不思議と、作業に取りかかればずーっと集中しとったよ。何だかんだ楽しかったな。特にハーモニカを吹くのがすごく気持ちよかった、久しぶりやったからかな。
選曲の面では1曲だけが今年にイチから作ったもので、残り3曲は昔作ったもの。夏ごろまでは今回はテーマを決めて4曲とも恋に関わるものにしようかな〜なんて思ってたんやけど、今年はさっき書いたとおりメンフィスやナッシュビルという、長年あこがれの音楽の地へ行けた年にもなったんで、音楽のことを書いた曲も入れることにした。けどこの曲やってさ、言ってみれば音楽に対する恋みたいなもんなんだよ。けっきょく強引に言えば全部ラブソングなんや、きっと。
アレンジは見事に4曲それぞれで毛色が分かれた。ギター1本のもあれば、オール打ち込みのものもあれば、ストリングスもどきを入れてみたものもあれば、といった感じ。まぁこれは、録音に向き合う年イチの機会なんやからいろいろ試そうと思って、わざとここ数年心がけてることでもあるんやけどね。
宅配ピザでさ、クアトロハッピーみたいなんあるやん?4分の1ずつ味が違うピザが集まって1枚になっとるやつ。今回の音源はちょうどそんな雰囲気になったよ。4曲とも音の響きは違えども、4つ揃ってこそ、おれの今年の生活の味がする1枚のCDの形を成すんよ。タイトルはそんな由来からつけた。ジャケットはピザじゃなくて寿司の絵になってしまったけど。
(2023.12.27)
1. おの字
12月録音。元々は大学の軽音部の卒コンでバンドをやるときに作ったもの。バンドで自分の曲が演奏できるというのは最高の体験で、それを超えるもんをおれが独自に作れるわけなんてないので、歌詞も曲の構成も一切変えず、ただがんばってバンドっぽくなるように音を重ねた。しみじみ音楽と出会えてよかったなぁっていう曲。気づけばもう人生の半分以上を音楽好きとして生きとるけど、おれは今でも相変わらずストーンズの新譜や実物のサンスタジオにキャッキャするよ。
2. いもりの黒焼き
12月録音。曲はもう覚えてないくらい昔に作って、一回くらいは弾き語りで人前でやったことがあると思う。なんと5作目にして初めて、自分の声以外ぜんぶ打ち込みで録音してみた。単純な曲やからいい練習になるかと思って。題材とタイトルは上方落語から採ったもの。こういう「恋に〇〇をかけて〜」みたいなのを言葉を代えて繰り返す、定型詩的な作詞は得意な気がするよ。
3. 教えない
12月録音。これが唯一、今年に作った曲。夏には歌詞の大半が出来てて、福井に遊びに行ったときに友達に聴かせた思い出がある。メトロノームも使わずアコギとハーモニカと歌だけ。前曲とは対象的に自由律的な作詞で、これはおれにとってはとても珍しいことなんやけど、じつは今年来日公演も観た今のボブ・ディランの雰囲気を自分の曲に出したかったんよな。めっちゃ長いけど、個人的には今年のお気に入り。
今年の初めにこの曲を思いついた頃と録音するために歌った今では、思い入れが丸っきし変わった感じがしてて、やっぱこの1年いろいろあったなぁと思うよ。
4. 午前でも午後でも4時は4時
11月〜12月録音。これもだいぶ古い曲で、歌詞は今回録音するにあたってけっこう書き直した。作った頃は弾き語りで歌うしかすべが無かったけど、当初から頭の中ではこういうフィル・スペクター風味やったんよ。今となってはちゃんと打ち込み用の鍵盤もあることやし、いっちょゴージャスな録音に挑戦してみよか、てなわけで引っぱり出してきた。彼女にフられてヤケになって酒と風俗で散財したなんてチープな歌詞を眠そうに歌う平日深夜の自分に、週末になって大袈裟な弦楽器をつけるのは楽しかった。
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