top of page
検索
  • 執筆者の写真bunkeiedison

FALLING, YES, I AM FALLING (2022)










◆落ちます!落ちます!



 年に1回、4曲入りのデモ音源をCDに残す作業を始めて、これが4作目になる。変わり映えした点で言うと、前回までは20代の自分で、30代としてはこれが初回の録音にあたる。

 今年は当初、夏のうちにぜんぶ録り終われたら、なんて考えてた。去年は春から夏にエレキギター作り、そこから曲を用意して音源の録音は冬になったからね。今回は趣向を変えて、夏に音源作り、冬の乾燥した季節にギターを作ろうかな、って。

 それが蓋を開ければ、こんな時期の完成になった。夏のうちに録音したのはけっきょく1曲だけ、残り3曲はすっかり肌寒くなった晩秋にやっと着手した。こりゃ、今年は年内にエレキギターをこさえんのは厳しいなぁ。とっくにアイデアはあるのに。

 録音作業(というか曲作り)をこんな冷え込む季節まで中断してたのはサボってたわけじゃなく、自分なりの建設的な理由があった。ちょうど夏から秋にかけて、今の暮らし向きを世間的に見てマシな方向に変えるチャンスがあって、それを掴もうと珍しくもがいてみたんよな。

 30歳を迎えたことに対しての主観的な実感は未だに湧かないけど、客観的に見るとこの年齢は結構いろんな条件や応募資格とかのボーダーになってたりする。そうした客観性はある意味平等で親切で、ここ3年ほど独りヘラヘラひもじくも呑気に暮らしてきたこんな大人らしからぬ自分にも、他人との差別なくやって来る。で、真面目な生活に戻るラストチャンスがあるならどうせならと、20代を通して何度か挑戦してきたある採用試験に申し込んだ。

 単なる年齢制限の区切りの側面だけじゃなくて、そういう真面目な試験や面接に参加する行為自体も、自分をあくまで客観的に推し量られる体験なんよな。大袈裟に言えばそういう機会って必然的に、自分の価値を世間的にどうやって表現するかってことを考えざるを得ないから、普段の暮らしでは使わない角度から自分を見つめることにもなる。そんな努力が自分にとっては新鮮で面白い気がしたんで、個人的には遠回しに「その年のおれの出来事アルバム」みたいな役割も果たしてるデモテープの制作期間を、この「もがき」と同時並行になるように方針転換した。

 まあけっきょく採用試験の結果で言えば、惜しいとこまで行ったものの落ちるわ落ちるわで、おれの暮らし向きは何っにも変わらんかったんやけどね。客観的な自分のアピールをしくじった代わりに、そのさなかの自分をどこまでも私的に、至極自分なりに捉えた曲だけが、思惑通りにこうして出来上がった。

 そんなのを形に残せただけで、今年も主観的にはじゅうぶん有意義やったよ。世間の目に「お前はこの場所に要らんからまだしばらく適当にやっとれ」ってジャッジされて、ほんならそうするわ!って開き直った、その過程。落ちてる、そうとも、落ちてるよ。

 けど飯も元気に食えてるんやし、ええじゃないか。また来年、面白いこと探してこ。

(2022.11.27)



1. コカイン

 11月録音。日本語の歌詞は自分で作ったものの、4曲の中では唯一のカバー曲。もともとはレヴァランド・ゲイリー・デイヴィスからランブリン・ジャック・エリオットに伝わったような、古いフォークブルース。実はコカインを扱った歌というのは、アメリカにはだいぶ昔から、少なからずある。今回の録音のギターや構成はストーンズのキース・リチャーズのバージョンを思いっきり参考にした。


2. 大恋愛

 7月〜8月録音。この曲だけは夏のうちに完成させた。春ぐらいに、ものの試しにマッチングアプリに手を出して、そのころ何やかんやで思いついた曲。今年のCDタイトル(FALLING,〜)はこの曲のイメージから付けた。柄でもないような曲調は、YouTubeのその手の広告とかで聴いた流行りっぽい音楽を自分なりに模倣した結果。


3. 鉱脈

 11月録音。6月に30歳なったとき、何かうっすら今後の希望も見えるような曲を残しときたいな、って思った。そんでそこから10月あたり、さっき書いた採用試験の最終面接を受ける(→落ちる)前後に仕上げた曲。昔話や童謡を歌詞に混ぜるのが好きなんやけど、今回は花咲か爺さんを一部下敷きにしてる。自分なりに好きなもの見つけて楽しんでこうよ、みたいなことは特に今年、酔っぱらったときによく言ってた気がする。もう曲にしたからには、酒飲んでも偉そうに喋んなよな、そんな当たり前のことを。


4. とんびの眼

 11月録音。「鉱脈」があまりにも長く、あまりにも個人主義的な気がしたので、ラストはサクッと、もっと人間誰もがみたいな歌詞で締めようと考えた曲。曲の着想から録音まで3日もかけずに、ギターも歌も同時録音であっさり済ませた、実にデモテープらしい作品。題名は鳶目兎耳っていう四字熟語から採って、歌詞は最後の一行から逆算する形で書いていった。これまで何年も身の回りの出来事きっかけでばっかり作詞してきた自分にとっては、かなり珍しいアプローチ。カーター・ファミリーと初期のディランをかけ合わせたような曲調にしたのも、フォークソングというか、みんなのうたを作ってみたいって意欲の表れかも。




閲覧数:57回0件のコメント

最新記事

すべて表示
記事: Blog2_Post

©2022 by サンテ・ド・はなやしき
Wix.com で作成されました。

bottom of page