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ジョージア、アラバマ、テネシー漫遊記⑦ 「9月17日(日)」

  • 執筆者の写真: bunkeiedison
    bunkeiedison
  • 2024年7月2日
  • 読了時間: 8分

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 8時半頃、友達に借りた部屋のベッドで目が覚める。この旅で一番熟睡できたな。


 これまで車での長旅中にたびたび見かけた「ボージャングルズ」なるファストフード店が気になっとったので、友人宅の最寄りにある店舗で朝食をとることにした。チキンサンドを売りにしたチェーンで、南部を中心に展開しとるよう。「日曜の朝はみんな教会に行っとるから…」という友達の読みどおり、店内はええ感じに空いてた。これまた友達の言うとおり、味はまあまあやった。

 ここを皮切りに今日は終日、友達の運転してくれるマイカーの助手席で移動する。おかげで快適なうえ、道路から見えるジョージアの街並みがよくわかる。


 ボージャングルズから車で小一時間ほど走って連れてってくれたのは、「ストーン・マウンテン」っていう一枚岩が中央にある自然公園。この旅ではアメリカらしいでっかい自然を見とらんかったから行きたかったんよ。でっかい自然公園なので、入場ゲートも車のまま入る。年間パスみたいなのもあるみたいなんやけど、それは買ったら車のフロントガラスに貼って使うんやって。

 この公園の目玉となる一枚岩はあとから調べてみると標高500mくらいで、てっぺんへ登るにはハイキングロードと直通のロープウェイの2択がある。友人は以前歩いて登ったらしいが、今回はロープウェイで登ることとする。そもそもおれが10月から就く新しい仕事がそっち方面のことなんで、話のタネにもアメリカのロープウェイに乗ってみたいってのが、ここを観光にリクエストした主なる目的だったのだ。

 日曜の午前ってことでロープウェイも人はまばら。友達が「歩いて登ったときはあんなにきつかったのに…」なんてこぼしとるうちに、ゴンドラはグイグイと岩肌を登っていく。窓からは岩に刻まれた巨大なレリーフが一望できる。アメリカの大自然の基準ではそこまで目立ったサイズでもないこの一枚岩が有名スポットたりえるのは、何を隠そうこの浮彫りのおかげ。南北戦争の南軍の3人の将軍たちが馬に乗っとる姿を彫ったもので、作者はラシュモア山に大統領の顔を彫ったあの人と同じ。あっちの作品のがより有名かもしれんけどな、おれもディープ・パープルがアルバムジャケットでパロってて知ったし。

 岩のてっぺんは風も吹いてて涼しかった。公園の自然や周囲の町並みを見下ろせるロケーション。ここまでほとんど地理的なアップダウンを感じないまま平面的な旅をしてきたから、標高はそこそこでも十分な迫力を感じたよ。あと、この自然公園はストレンジャー・シングスのロケ地でもあるんやって。おれは観たことはないけどデモゴルゴンくらいは知っとる。ドラマと言えば、友達はちょうど日本で話題になっとるヴィヴァンをこっちで鑑賞しとるらしい。おれはこれも観たことがない。帰りの飛行機内ででも観ようかしら。

 ここではロープウェイの写真の入ったマグカップをお土産に購入。新しい職場で使ったろかな。


 アトランタの中心地へ移動して、コカ・コーラ社のミュージアム、その名も「ワールド・オブ・コカ・コーラ」へ。アトランタは、この世界一有名な飲み物の発祥の地なのだ。

 これぞアトランタ観光って感じの観光やったな。入場するとまずはウェルカム映像的なVTRをスクリーンで見てから各展示を回ってく構造なんやけど、そのVTRを待つ間も全身コカコーラカラーのお兄さんがテンション高く魅力的な各フロアの紹介をしとる。極めてアメリカだ。

 前に来たことのある友人もお墨付きの人気コーナーは、世界中のコカ・コーラ飲料が試飲できるドリンクバー。フロアじゅうに置かれたサーバーのボタンにはそれぞれ「スペインのアクエリアス」やら「中国のコカ・コーラ」やら書かれとって、同じ製品でも地域によって風味が異なることがわかるように飲み比べが出来る。そういやさっきの陽気なお兄さんも「オレ的ベスト3はイタリアの○○と~、…」みたいなこと言うとったっけ。世界を股にかける企業のスケールが知れる。サーバーに群がる人々のほうも、国籍あまたの老若男女。それがドリンク目当てに一か所に集まっとるんやもんな。確かに面白い光景や。

 ほんで、おれが個人的にツボにハマったコーナーがそれとは別にあってさ。コカ・コーラの飲料にはいろんな香料が含まれとるってことで、いろんな香りを嗅いでそれから何を連想するかとか、それの原料が何かとかを当ててみようっていうコンセプトのフロアを見てたときの話なんやけど。参加者がグループごとにテーブルにつくと、そこは司会のお姉さんの合図でボタンを押すと何らかの香りが出てくる装置になっていた。「第一問、これは何をイメージして調合された香りでしょう?それではボタンを押して嗅いでみよう!」みたいな感じ。

 それがさぁ、おれと友達は自分らのテーブルでクイズが始まんのをずっと大人しく待ってんのに、周りの家族連れのアメリカ人とか他のグループが、テーブルについて装置のボタンを見つけたとたんにゼロ思考でシュコシュコ連打し出してさ、においの出てくる穴に鼻を目いっぱい近づけて必死にクンクンしてんのよ。フライングもいいところで、親がシュコシュコクンクンしてんのを見てその子どもも真似してシュコシュコしだして。みんな真顔で必死にボタン連打しとんのよ、まだ何のにおいもせんのに!その現象があちこちのテーブルで巻き起こっとって、マヌケな光景に思わずこの旅でいちばん笑ってしまったよ。何やってん、あのぶざまなカオス。

 お土産コーナーではレトロ風なブリキ看板を買った。自分用か、それとも人にあげるか。新しい店を作っとる友達もおるし飾りになるかも。


 コカ・コーラを出るとアトランタ五輪のモニュメントのある公園があった。天気の良い中を歩いとると突然「パァン!」って音がした。何やと思って音のした方を向くと、女子がたむろしてクラッカーを鳴らしてキャッキャしとる。TikTokでも撮っとんかなぁなんて思いつつ横を歩いとる友達の方へ向き直ると、めっちゃビビっとった。彼もアメリカでの生活がだいぶ長くなったんやなぁ、と感じた。そういやおれ、アラバマ州のウォルマートで見える位置にピストルぶら下げたおじさん見かけたときはちょっとピリッとしたわ。


 昼飯にはアメリカらしくステーキハウスへ連れてってもらった。「ロングホーン・ステーキハウス」の、アトランタを少し出たところにある店舗。旅を通してここまでめったにまともな食事をとってなかったのでウキウキ。料理を待っとる間に周囲を見渡したら、近くの大きなテーブルでは大所帯の家族が一堂に会してザ・日曜の会食みたいな感じで楽しんどる。観光スポットやファストフード店を巡ってたから、そういう現地の人々のふだんの生活っぽい光景を目にしたのも印象深かったかな。

 腹いっぱいなったけど、めちゃめちゃ美味かったなぁ。会計はテーブルでスマホで支払えるシステムやった。その辺はこっちでも取り入れられとんのね。


 満腹になったあと、これもおれのたっての希望で友人宅の近所にあった町のレコード屋さんに立ち寄った。中古のCDを3枚ほど選んで購入。やっぱ地元の何気ないレコード屋さんとなると、置いてあるラインナップまで何気ない魅力があって良かったな。明確なコンセプトや偏りが無いっていう感じがさ。

 けどそんなランダムな並びの中にも、例えばメンフィスのブルースの殿堂で展示を見たエディー・クリアウォーターのCDを見つけるというような、自分の旅とリンクする出会いがあったりして、これが本当に面白いし、嬉しい。なかなか彼のようなブルースマンのCDなんて日本じゃ簡単に出くわさんしな。

 友達は友達で道中の車内でもBGMを絶やさないような音楽好きなのでこっちで生活してる間にレコードプレーヤーなんか買ってみたら?と強くお勧めしておいた。あんな広い家ならでかい音で音楽も聴けるやろうし。そしたら、買うなら奥さんが日本にいる今がチャンスかな、やってさ。

 あと、さっきのステーキハウスで話題になったんやけど、彼の会社の人が言うには、英会話を上達させるには行きつけのレストランを作って顔なじみの店員さんと世間話をするのがいちばんなんだそう。それならご飯屋さんじゃなくたって、こういうレコード屋さんに通って店員さんと仲良くなるのも面白いじゃないか、未知の音楽に出会うきっかけにもなり得るし。おれ自身はシャイなので絶対そんなことできへんくせに、他人事にそんなことを思う。


 友人宅に帰ってからも、すべてお任せのゆったり助手席観光の気分が抜けないまま。友人がヴィヴァンの最終話を観てる間、(ネタバレ防止も兼ねて)ベッドで横になって小休憩。

 ゴロゴロしとると下の階から友達の「え゛ぇっ?!」みたいな声が聞こえた。どうやら噂通りおもろいドラマらしいなぁ。

 最終話の再生が終わったところで、その後はダラダラと談話。またしてもビールを3本ほどいただく。友人は明日出勤のため、例によって同じタイミングでおれも出かけることとする。


 ゆったりした実に良い日曜日やった。朝が来たら旅も後半か。ナッシュビルへ行こう。






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