会報のトラ vol.4

更新日:2019年7月18日

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全国一律の、全国一律の、えー最低賃金。これを実現すべきだろうと。
じゃあ、中小企業零細企業どうするんですかと。赤字で払えないじゃないですか、そんなもん払っちゃったら、倒れちゃいますよ、っていう所には政府が補償すりゃいいと、私は思ってんですね。
で、じゃあそのような状況になったときに、東京で1500円で暮らすのが楽なのか?それとも地方で1500円で暮らすのが楽なのか?っていうような選択肢になっていくと、私、状況は変わっていくんだろうなあ、とは思うんですよ。
だから実際にそういうほんとに、なんだろな、あの…小さく前進みたいなことを続けてたとしても、東京がどんどんでっかくなってってんだから、三大都市圏がどんどんでかくなってってんだから、これ一極集中とか三大都市圏の集中っていうのを、これ、なんだろな、避けることできない、ってことですよね。
だから、考え…もう一番やるべきことは、私、そういうことなのかな、賃金であったり…
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…あっちの演説がこっちまで聞こえてきやがる。うるせえ野郎だ。こっちだって絶賛演説中だっつうの。
おい、間違ってもあっちを聞きに行くなよ、アホの大衆ども。
人がせっかくバカでもわかる理屈で演説してあげてるんですから…
(聴衆の大半が向こうの演説へ移動する)
…クソッタレが。
何々、何を喋ってんだ?…あァなるほど、地方創生ね。
小さく前進みたいなことを続けてたとしても、東京がどんどんでっかくなってってんだから、三大都市圏がどんどんでかくなってってんだから、これ一極集中とか三大都市圏の集中っていうのを避けることできない…?
そりゃそうです。その通り。
ただ、アチラの方がおっしゃる対策案である「最低賃金の全国一律化」だって、パンチが無さすぎて「小さい前進」とまるで大差のない歩幅に見えますね。まさに五十歩百歩、てか?
(一同失笑)
だいたい、地方創生を案ずるつもりなら、まず「創生」という漢字から考えないと。これだから文系の頭ができてないアホは困る。
「生」を「創」るんですよ。生活創庫(※1)みたいでしょ。あの会社だってあんだけマネーの虎で威張り散らしてた社長が率いてたのに関わらず、今じゃどうなりましたか?
口に出す言葉や名付ける漢字は責任持って考えとかないと、どうせ途中で船頭の脳が足りなくなって山に登る。
地方の生活を創るんですよ。
賃金を平等にしたから何だってんだ。
ただ単に東京と地方、どっちが住みやすいかで判断しただけの愚民が田舎に集まってきたところで何になるんです?
そんなスタンスで来たって、彼らは今までの生活よりそこが快適、と自分が感じられればそれで終わり、目標達成じゃないですか。
住みつく先の地方に対して、何か誇りを持ったり貢献したりするようになるんですか?
いや、何の信念も改善意欲も持たんでしょう。そんな奴ら、寄生虫といっしょでしょう。
(聴衆からヤジが飛ぶ)
一方、そんな彼らを迎える、地方の哀れな原住民はどう感じますか?
やってきた都会者どもの魂胆は見え見え。賃金が都会と一緒になってやっと我が地方に目を向けてやってくる者たちに対して、その流入を本当に心から受け入れられますか?
田舎者は嫉妬深いとも聞きます。昔より「村八分」なんて言葉もあります通り…
(聴衆からヤジが飛ぶ)
黙って聞け、バカどもが。
要するに、ただ生活のための金に関わる事情が変わっただけで、今までのバックグラウンドが違う者同士が同じ環境で力を合わせるようになるとは、これ到底考えられんわけです。
つまり、力を合わせるきっかけになるような、もっと決定的な何かが足りない。
流入組と古参組、双方が「これは力を合わせるしかねえなぁ」と腹をくくれるような。
え?私どもの案ですか?こちらの案は画期的かつ絶対的ですよ。
この案を実行すれば、もう地方で力を合わせて新しい生活を創りださざるを得なくなる。
おまけにニッポンが抱える重大な問題も並行して解決できる。
(聴衆固唾を飲む)
東京にニッポンじゅうの高齢者を集めて介護都市にして、それ以外の世代でいま都市圏に住んでいる人々を、都市圏外の地方に割り振るんです。1億総屯田兵(※2)です。
(聴衆全員呆れて去る)
東京なんてぶっちゃけ、もう開発しきって住みやすさのバケモノみたいになってるんでしょう。半径500メートルもあればきっと何でも揃うんでしょう。知らんけど。
何でも揃ってて、施設のバリアフリー化も最先端を行ってる場所でしょう。誰もが住みやすいそんな環境が出来上がっている。
なのに、そこに住んでるのは、金持ちやら、大企業勤めのサラリーマンやら、何かよく分からん憧れを持った若者やら、無駄に生活に燃える地力をもったニッポン人ばかり。
そんな奴らはどこだって住もうと思えば住めるんですよ。
今すぐ快適な六本木ヒルズを全国のジジイやババアに明け渡せよ。
いいですか、冷静に考えてください。
東京ほど建物ごとのキャパがあり、エレベーターもあり、移動の交通手段も豊富…つまり介護や高齢者の生活に向いてる場所はないんですよ。都市として発達しきってんだから。
ニッポンじゅうの快適な住環境を必要とする人生の大先輩がたを、彼らがいなくては成し得なかった成長を遂げた、我らが大東京に一極集中でお迎えするんです。
そして、彼ら高齢者自身、および彼らのお世話に携わる仕事をされる方達以外の比較的若い人民は、指定された(希望があるなら申し出ても良いでしょうが)行き先の地方へ散るんです。
発展しきった東京には、熟しきった人間を。発展の余地ある地方には、開拓の余力のある人間を。カンタンなことです。あんたがたのようなサルでもわかるでしょう。
現状ではお先真っ暗の介護問題も、東京で一括管理することで効率化を図れば、自ずと光は見えてくるでしょう。シニア関連の業界にとっては、新たなビジネスチャンスにもなり得る。
ということで、性懲りもなく半端な覚悟で東京に憧れるドリーマーども、目を覚ましなさい。
そんなオシャレもカッコつけも発展も成長もゴミも飽和した首都に、今さら何の夢がある?
あんたがたの行動原理は、じゃがりこの底に溜まった残りカスを必死で手で掬うのとほとんど同じ。みっともないからやめろ。
覚ました目を開けて地方各地に顔を向けてみろ。
若者がいないなり、金がないなりで解決できなかった課題を山ほど持った、元来は人のいい地方民たちが困っている。
彼らと一緒にその地方が未だ見たことない世界を、生活を創りあげることこそが、現代の夢、フロンティアじゃないのか。
地方にはまだ折れてないピンピンのじゃがりこLサイズが山ほどある。
そこでの生活の開拓・革新に燃えに燃えて、人生の終わりが近づいたときは、胸を張ってかつてあんたがたの憧れた東京で極上のサポートを受けながら寝ればいい。
(徐々に聴衆が戻ってくる)
さて、地方の田舎者ども、いきなり東京を終われた若者どもが血眼になってそっちへ向かうことになります。
そんな彼らに、まずはあったかい手を差し伸べてやったらどうですか。
彼らは冷たい大都会ではそんな体験なかなか受けてないだろうから。
彼らは初めのうちは東京への幻想に取り憑かれているでしょうが、新天地での夢を見るようになれば、きっと置かれた場所にそこ特有の良さを見出すようになる。地方のプライドを教えてやってください。
そうなれば、新規も古参も力を合わせて、他の地方都市とも競い合って、今まで解決できなかった課題を壊して、どこにも負けない夢のような、唯一無二の都市を作ればいい。
え?そのうち新規に自分たちの地方を乗っ取られそうで怖い?ほ〜ら出たよ、村八分感覚!
(四方から石が飛ぶ)
…だったら市議会でも県議会でも、地方議会を二院制にしたらいいじゃないですか。新規院と古参院とでもさ。ダッセェ名前だけど。
最後に、地方でぎりぎり生きてるジイさんにバアさん。肩身が狭くないですか。
実際にアッチに逝く前に、それこそ天国みたいな大東京に行ってみませんか。
北欧の福祉国家なんざ鼻で笑えるでしょう。
ジイさんバアさんのラスベガスを東京に作ろうじゃないか。
そうだ、ベガスといえばギャンブル。大好きなパチンコ店だって、そう、海物語だって、皆さんの需要のある分だけ作ればいい。
朝から打っても、礼儀のなってない恐い若者は店にいませんよ。
貯めるだけ貯めて使い損ねた財産もスッキリすることでしょう。
地方の足の必需品だった、車の運転免許だって、無理に返すことないんですよ。ある程度モウロクしたジジババでも運転できるような、老人に特化した交通ルールや道路設計を東京にだけ適用すればいいんです。
なに、それでも万が一事故ったところで、ちょっとアチラへのご出発予定が早まるだけ…
そもそも東京の交通網なら車の出番も減るでしょうな。シータクも山ほど走らせましょう。
…さあ皆さん、2枚目の投票用紙には我が秘密結社、「リズムアンドブルース解放のトラ」、「リズムアンドブルース解放のトラ」と書くように。
きっとこのニッポンをダメにしてみせます。取り返しのつかないくらいに。
(選挙ワーゲンバス、聴衆に爆竹を投げつけたのち逃走)
※1
株式会社生活創庫(せいかつそうこ)は、かつて存在した静岡県浜松市東区に本社を置くリサイクルショップフランチャイズチェーン大手の会社である。
最盛期の2009年8月期に約27億円を記録した売り上げは、同業他社との競争激化により生じた不採算店舗の閉鎖を行ったことから、2012年8月期には約10億円に減少した。増大した金融負債や赤字決算により資金繰りが悪化し、2013年5月1日に資金ショートを起こして静岡手形交換所から取引停止処分を受けた。負債総額は約15億円。
https://ja.wikipedia.org/wiki/生活創庫
※2
屯田兵(とんでんへい)は、明治時代に北海道の警備と開拓にあたった兵士とその部隊である。1874年(明治7年)に制度が設けられ、翌年から実施、1904年(明治37年)に廃止された。
https://ja.wikipedia.org/wiki/屯田兵



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