会報のトラ vol.13


モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズさん、77歳で死去
「テリー・ジョーンズ、さようなら。(モンティ・パイソンの番組で定番の)あの巨大な足がついに下りてきてあなたを踏むんですね。あなたのおかげで、本当に楽しかった。本当に限りなく面白くて楽しかった。なんて素晴らしい才能と心と頭脳だったことか」

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好きな趣味が軒並み古いせいで、憧れたミュージシャンも、衝撃を受けた詩人も、渋さに惚れた俳優も、毎月のように死んだ知らせが目に入るような生活を、もうかれこれ10年以上も続けてきた。
あまり良いこととは言い切れんが、そんな訃報の群れとの付き合いかたにも最近は多少慣れてきて、死んだことを真正面から嘆くより、その人が生きた時代の最後の最後を共有できたこと、その人がどのくらいの扱いでこの世を去ったのか見れることにありがたみを見出してるキライがある。
生まれる時代を50年は遅れたおれには、それくらいの捉え方でもしなけりゃ、「途切れなく死にゆく憧れ」という現実に対応できない。
おれが歳をとってさらに自分の趣味に深くなるほど、おれの憧れは遠ざかっていく。
スタート時点でだいぶ先にいるアキレスにのろまな亀が追いつける訳があるか?
そんなスタンスのおれが、この人の知らせには珍しくちょっとのあいだ凹んだな。
モンティ・パイソンていうモノの性質上、いちばん純粋に笑ってやり過ごすべき訃報やったのに。
中学から高校にかけての純粋無垢やったおれを、後に大学で専攻するほどにイギリスという国の文化に惹きつけた要素は、大きく数えて3つある。
出会った順に言えば、ビートルズ、不思議の国のアリス、そんでこのモンティ・パイソン。
自分のバックグラウンドにある文化や歴史、みんなが共有してるようなイメージを、何の躊躇もなく笑いにする集団に度肝を抜かれた。
既存の常識をつついていじって可笑しさを生む、ていう点ではアリスのナンセンスさに通ずるんやけど、笑いに変えるにあたって何のためらいの無いことからくる爆発力がエゲツなかったんよな。
それでいて6人のパイソンズそれぞれがアクションや作曲、イラストていうような固有の天才さを持ってて、その掛け算でも爆発力は上がる。
そこはビートルズみたいな、個性の集まったバンドやグループであることの面白さにも通じてる。
モンティパイソンは、おれがビートルズやアリスに出会って体験したそれぞれの面白さを、クッソ笑えるコメディていう一点にまとめて具現化してくれた、おれの趣味嗜好を決定づけたどデカい爆弾やったと言える。
いかんせん、彼らはおれの「笑い」の物差しを1本付け足してくれた存在でもあるから、そのメンバーが死んだっていう知らせを受けたとき、いつものような憧れの死を適度に軽く受け流すような処理が頭でできなかったんやろうな。
こういうのを笑ってやり過ごすこと自体もパイソンズが教えてくれたんやもん。
グレアムチャップマンの遺灰を蹴っ飛ばしたりして。
テリー・ジョーンズはそれらイカれた6人のなかでも、声の甲高いオバさんを演じても、威厳ある裁判長を演じても、一般男性としてヤベぇキャラに翻弄される役でも、歌を歌わせてもソツなくこなせる、モンティパイソンらしさを演出してた人やったと思う。
もはやカワイイんよな、オバさん役とか。
インテリ揃いのパイソンズのなかでも、彼はオックスフォードで英語と歴史を研究していたそう。
モンティパイソンの活動以降は歴史学者の面で活躍してたみたいやし。
冒頭のニュースの記事の中でも晩年には「リチャード2世の名誉を回復した人間として覚えてもらう」のを望むみたいなことも言うてたみたいね。
パイソンズとしてのブッ飛んだコメディの一方で、しっかり自分の基盤になった分野のことを突き詰めてるのもカッコいいんよな。
そうそう、彼らと出会ったことでおれに芽生えた物差しはもう1本あったわ。
モンティパイソンに出会って彼らのことを調べてたころ、よく「こんなイカれたコントをしてるのに実は高学歴、エリート中のエリート」ていう紹介のされ方をよく目にした。
おれは本来、高学歴の行き着く果てっていうのは、こういう何かに振り切った形というか、枠を突き破ったものになるべきもんなんやと思うんよな。
「高学歴、エリート中のエリート」やからこそモンティパイソンになれる、というか。
だいたい、良い大学を出たから大手企業に就職するだの、高給取りになるだの、国を引っ張るだのっちゅうのは、良い大学を出んかった側でも想像のつくコースやんけ。
良い大学に入って、そうでない奴らの味わわなかった勉強や経験を積んだ奴が、卒業後に誰もが想定しうるルートに進んで何の逸脱も無く暮らしていくんなら、その高学歴の中身は何やったんや、と。
「エリート」やからこそ、パンピーの見えないものを目的地にしたり、そこに向かって突き抜けたりできるんじゃないかと思ったりする。
突き抜ける方向が真下のどん底であっても、エゲツない周り道であっても。
そういうナビをおれの脳みそのどこかに取り付けたのもパイソンズだったかもしれない。
たまに、「なんで英語を専攻したのにそっちの仕事に就かないの?」て聞かれることがある。
ちゃうねん。
おれの好きな英語は安易に仕事にできるような程度のモンじゃないし、おれは仕事で自分の嗜好を腐らすよりよっぽど、このどうにもならん日々の中に好きでやまないナンセンスを見出しとんねん。
おれも死んだあとには「ナンセンス文学を愛しながら暮らした人間として覚えてもらう」とええな。
突き詰めとったら、掘り進めとったら、どっかでまたそのうち地上に出るやろ。
そうやろミスター・ジョーンズ。



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