映画という名のコップの話

更新日:2019年9月6日

昔から映画の話というのは人と喋るときにメジャーな話題になるらしい。
好きな映画の話をし合うときもあれば、一緒に映画を観に行った帰りに感想を言い合ったり。
おれはあえて映画好きって言う程ではないから、そこまで映画の話が得意って訳ではないけど、そういう不得意なタイプの人間どうしでさえもある程度話を続けれるような、ちょうど良い話題のチョイスが映画なんかな、と思うことがある。
そう思う理由ってどこにあるんやろう。
きょうは、映画をひとつのコップに見立てる話。
映画っていう娯楽のフォーマットは、他の娯楽より、何というか、パッケージがきちっと揃ってるんよな。
第一にその時間の長さの均一性。
長い短いはあるものの、たいてい映画って2時間前後やん。
好きな映画は?っていう話になってお互いがチョイスしたタイトルを比べるときも、映画の長さ自体はだいたい同じようなもんやから、そこが平等な感じする。
映画の他に映像作品のフォーマットというと、アニメとかドラマもあるけど、これらは1クールとか1シーズンとか、全話数の規模感がまちまちなんよね。
1クールで完結するドラマと2クールあるドラマでは、描写の細かさとか展開の丁寧さを平等に比べづらいやんか。
注ぎ込む器というか、コップの大きさが揃ってないというか。
その点映画どうしを比べるときは、ある程度コップの大きさは同じなんよね。
2時間っていう平等なコップの中に、何がどういう風に注ぎ込まれてるかっていうのを並べて比較しやすい。
ここらへんが、映画っていう話題の便利な点の1つやと思う。
その映画というコップに対しては、そこに自分の感受性を注ぎ込むことにもなるんやけど、2時間っていう一定の時間をぶっ通して鑑賞する形式はこの点でも便利やと思う。
毎週1話を見ていくアニメやドラマでは、コップに対する自分の感想の注ぎ方がチョビチョビになるんよね。
1注ぎめと2注ぎめの間にブランクが空く。
その間に自分の実生活の中で起きたことや感じたことは、少なからずそのコップに入れる感受性に影響を与える。
映画であれば、それを観るための2時間程度を一度に、自分の実生活から「抜き取って」鑑賞することになる。
チョビチョビじゃないんよね。
だから、割と純粋にその日までの生活で自分が養ってきた感受性をピュアにそのコップに注げるんじゃないかなあって思う。
2人で同じ映画を映画館で観た後にその感想を話し合ったりするのが面白いのは、そのコップの中にそれぞれの人本来の感受性とか考えが同条件に、純粋に入ってるからなんじゃないかな。
もうひとつコップの大きさがだいたいどれも同じであることによる映画の利点がある。
それは、自分が注ぐ感受性の必要量を映画のジャンルによって調整できること。
どんな映画が好き?っていう話題では、例えば「頭カラッポにして観れるからアクション映画が好き」と言う人がいる。
それに対して、「今までの自分の在り方を考えさせられるような社会派な映画が好き」、て言う人も。
これ、どっちのタイプの人もうまい具合に自分に合う映画のコップを見つけれてるんよな。
前者にとっては、映画のコップは製作者側が注いだアクションシーンの痛快感でなみなみになってて、そこに自分の意見みたいなものを注ぐ余地がほとんど無いくらいなのが好物なんよね。
後者のタイプは、製作者がある程度までコップに注いでくれた意図や問題提起に呼応して自分の感想や経験、考察を 注ぐことによって1杯のコップが完成する、ていう流れに映画を観る喜びを覚えてる。
この両極端の映画嗜好について、どっちのタイプが優れてるっていう話にならないのは、どちらも「1杯の同じ大きさのコップを満たすように映画のメッセージ/自分のメッセージを注ぐ」っていう映画鑑賞の醍醐味を実現してることには変わりないからや。
「コイツ映画実はあんまり好きじゃないな」とか「浅いな」とか思われちゃう人っていうのは、映画の用意したコップに自分の感性を必要量注ぎきれてないのかもしれない。
検尿カップにおしっこしようと思ったら全然出えへん、みたいな。
逆に言うと、「コイツ映画通ぶっててウザイな」とか「調子こいてんな」とか思われる人は、そのコップがとっくに溢れてるのに関わらず自分の意見を注ぐことをやめない人なんやろうな、と思う。
ダバダバそこらへんにおしっここぼしながら溢れんばかりの検尿カップを持ってこっちに近づいてくるような奴を想像したら分かりやすいかな。クセエ!
映画の話というのはある程度いろんな人と喋りやすい話題やし、それでいて、その人が映画というコップをどういう風に満杯にするかを知ることで、その人となりを何となく知る手がかりになる話題でもある、かもしれない。
映画というコップの大きさがある程度一定やからこそそれが分かりやすいんやろうな。
おれもおれなりにコップを満杯にできるような映画にこれからも会いたいもんや。



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